個性にフォーカス
コンサルタント & アートディレクター
大谷 学 / Manabu Ohtani
新規出店のロゴタイプから戦略企画、出版社の取材撮影からカメラアシスタント、新聞広告制作など、あらゆる現場でのクリエイティブ経験を経て、多くの情報の中から伝えるべき本質を的確に編集し、顧客の個性を映し出すことを得意とする。
グラフィックデザインに憧れて
幼い頃は、父親が建築板金業を営んでいたという事もあり、建築現場で端材を使って何かしら作って遊んだり、日常生活の中に“モノづくり”がありました。作るのも好きでしたが、使い込まれた道具にもとても魅力を感じていました。
そして、高校時代に心底夢中になったのは音楽。音楽そのものも大好きでしたが、レコードジャケットがたまらなく魅力的で、制作クレジットを見てはいつかはこんな仕事をしたいと、漠然と「グラフィックデザイン」という職種にあこがれた頃でもありました。
高校を卒業後、進学よりも都会へ行きたい気持ちと、いち早く就職したい気持ちから凸版印刷へ入社しました。
印刷現場の経験は今でもとても役立っています。パッケージ印刷製造をメインとする部署への配属で、グラフィックデザインに触れる機会も多かったです。営業の先輩が企画をすすめる様子から、上司の方々がクライアントと本紙色校正についてずっと会議室に缶詰になっているのを見ながら、いつかそのパッケージを企画してみたい、デザインしてみたいという気持ちになりました。上司や先輩に、どうやったらグラフィックデザインに携わることが出来るのか、そんな現場はないのかと、よく質問もしていました。
一枚の写真に込める価値観
富山へ戻り富山美術工芸専門学校(現・富山クリエイティブ専門学校)で入学しました。ここで一番学んだ事、それはなんと言っても数え切れないアルバイトという名の就職活動です。卒業生の方々が勤めている会社でのアルバイトは、若い時分でしか得られない貴重な経験です。出版社の取材撮影、式場ビデオアシスタント、キャンプ引率、カメラスタジオのホリゾント塗り、写真現像所でのプリント、新聞広告制作、デザイン制作会社でのアシスタント。言われるままにありとあらゆる経験を積ませていただきました。当時制作させていただいたお店のロゴマークは未だに使用され、お世話になった方々には今でも可愛がっていただいてます。これらのアルバイトを紹介してくださったのは写真技術を教えてくれた教授です。教授の紹介するアルバイトは、写真とデザインを要する事ばかりでした。いわば授業では学べない実践チャンスをたくさん与えてくれました。
そこで学んだのは被写体と対峙せよという事。料理撮影、ポートレイト撮影は同じ視点に立たないと見えてこない事が多くあります。例えば料理写真では、素材が育った環境、料理人が思い描いてきた事、すべての関係性を一度インプットしてから撮影するのとしないのでは、全く違う写真になります。被写体の背景に潜む価値感をつかみ取ることが大事なことを学ばせて貰いました。たった一枚の写真にどれだけの価値を引き出し、切り取るかという事です。学生時分には何気なく教わってきた事が、今では何ものにも代えがたい経験として刻まれています。